邪神の呪いと推薦状:5th SHOT
こんばんわ、れらです(’▽’)ノ
さて、本日のOblivion。

一人留守番を任されたカイルは、神妙な面持ちで、眠る家主を眺めていた。
一体どんな夢を見ているのやら・・・彼女の表情は悪夢でも見ているかのように硬い。

アホみたいに脳天気な顔がデフォルトなはずなのに、どうして寝ている時だけそんな顔をするんだか・・・見ていると何だか腹立たしくなってくる。
けれど憤りの半分は、どうしても自分に向いてしまうものだから、カイルは益々気を落とす。
あの時・・・ラグナに過去について詮索され「失った記憶を取り戻したいか?」とカイルが訊ねた時、彼女は笑みを浮かべて平気だと答えた。
正直、今の生活に波風を立てられたくないと思っていたカイルは、ヒヨコの言葉を額面どおりに受け取った。
けれど・・・

両親がいるなら会いたいと思うだろうし、兄弟だっているかもしれない。もしかしたら・・・恋人とかも?
まぁ、その辺りは彼女の稚拙な恋愛観から鑑みるに、あまり現実的ではないだろうけど・・・と思いながらも、カイルは深刻そうに家主の顔を見遣った。
彼女にだって、グレイ・フォックスのように家族の元に帰りたいと願う気持ちはあるだろう。
もしもそうなら・・・

意識のない家主の額を指先で軽く弾きながら、以前は言えなかった言葉を口にする。
すると・・・

唐突に声をかけられて、カイルは弾かれたように立ち上がった。
彼の背後では大袈裟に驚いている(たぶんふり)ルゥさんが、これ以上無いというくらい目を見開いてこちらを見ていた。

ケチらないで改装費くらい出してあげるようにシィナに言っておいてよー、とかなんとか言いながら、ルゥさんはしたり顔でカイルの顔を覗き込んだ。
ヒヨコに囁いた台詞の意味に興味津々
といったその視線にいたたまれず、カイルはわざとらしく咳払いなんぞをしながら、サクッと話を他所へと移す。

内藤先生の質問に律儀に答えると、ルゥさんはベッドの方へと視線を移した。

シィナも内藤君も過保護だねっ
とか何とか言いつつも、ルゥさんはとことことベッドの脇に歩み寄り、深く眠り込んでいる家主の横顔を覗き込んだ。

燭台の明かりに照らされたヒヨさんの顔色は血色が悪く、表情は苦しそうだ。
いつもは無駄に呑気な笑顔を見せている分、なるほど見る側はドキリとさせられるだろうな
=3とお子様組2名に対して密かに同情を覚えつつ、ルゥさんは右手を彼女の頭上に翳して浅く目を閉じた。
体内のマジカを指先に誘導し、そこに意識を集中すると、通常の感覚では触れることの出来ない相手のマジカを感じ取ることが出来る。
それは治癒術を専門とするヒーラーの腕前を左右する能力だ。
見た目で分かる傷ならいいが、そうでない場合、医術の医の字も伝わっていないシロディールでは、この力こそが物を言う。
いくら呪文を覚えていても、患者が負ったダメージを正確に把握できなければ、魔法なんて宝の持ち腐れ。むしろ代謝異常を引き起こし、かえって悪化させることすらあるからだ。
翳した手を家主の額から肩、そして足元の方へと体に触れるか触れないかのすれすれの位置でゆっくりと滑らせていくと、不思議な暖かさが指先を掠め、ルゥさんは思わず口元を緩めた。
少々変わり者の彼女のマジカは、やっぱり少し変わってる。
そこには、多くの魔術師に触れた時のような刺々しさは微塵も無く、脳筋のような荒々しさも無い。
例えるなら、人懐こい子犬だろうか。
本来、人の体に宿るマジカは、こうして調べられることを嫌うから、大抵は刺々しかったり冷たかったり、突き放されるような感覚を覚えるのだけれど、彼女の場合、状態を調べている自分に対して「何をしているの?
」と興味に駆られて自ら鼻を寄せてくる感じだ。指先がくすぐったい。
無防備だなぁ・・・とルゥさんは思うが、それは大いなる資質でもある。
しかし、同時に弱点とも言えた。
一通りの診断を終えてルゥさんが体を起こすと、それまで黙って様子を見ていたカイルが、沈黙の術でも解かれたように口を開いた。

若干弱っているマジカが教えてくれたことは「休ませて」ということだけだ。
ルゥ「まぁ、十分な睡眠と栄養を取って、心配だったら錬金薬を飲ませれば
2、3日でいつも通りになると思うねっ
」
こういう場合は魔法を使って無理矢理回復を促すよりも、薬効の方が体に負担がかからなくて良いことを付け加えると、ルゥさんはふと首を傾げた。

ただの過労なら特にヒーラーの出番なんてないのになぁ・・・
と不思議がりつつ・・・

ルゥさんが、これだ!
という答えを探し当てた瞬間、キッパリとした否定の言葉と共に、兄が言うところの甘えんぼさんが帰ってきた。
いささか不機嫌そう・・・というか、焦っている感のあるシィナは、ズカズカと大またで二人の横を通り過ぎると、チェストの上に置いてあった家主の荷物を派手に床へとぶちまけた。
錬金術用のキノコに野菜、ヒヨコ印のアンプルに、何の為に持ち歩いているのか良く分からない狼の毛皮や、研磨したらひょっとして宝石に生まれ変わるかもしれないカラフルな原石などなどが床に転がり、その中でも一際ガラクタ臭を漂わせている錆びた針金のような物体を摘み上げると、シィナはくるりと踵を返し、ルゥさんの眼前に突き出した。

目下、盗人稼業に精を出している家主にとっての必須アイテムを差し出され、ルゥさんとカイルはヒヨコ饅頭でも差し出されたかのような顔になった。
何故にシィナがそんな物を手にして血相を変えているのか分からない。
するとシィナは強引にルゥさんの手にスケルトンキーを押し付けて、深刻な面持ちでこう言った。

・・・と
つづきます