謎の遺物とスラムの危機:3rd SHOT
こんばんわ、れらです(’▽’)ノ
さて、本日のOblivion。

ヒヨさんは、カイルと共に帝都の港地区に来ていた。
以前、盗賊ギルドの仕事に付き合ってもらった際に、ちまっと交わした「報酬で夕ご飯を奢る」という約束を、カイルがきっちり覚えていた為だ。
内藤先生は、帝都におけるブルジョア地区である、タロスプラザにある店がいいと強く主張しているのだけれど、皇帝の名を冠する宿屋の食事は、観光客向けで高いのだ。それにキノコのキの字も置いていない。
そんなわけで、本日もコストパフォーマンスとキノコが揃った庶民の味方、執事喫茶に足を向けるヒヨさんである。

先日招待されたレィヤウィーンの晩餐会にて、資金の当てをふいにしてしまった穴埋めか、本日のシィナはブルマの伯爵夫人の道楽に付き合っているらしい。
カイル「あそこの伯爵夫人も、古文書だの遺物だのってよく集めてくるよなぁ
=3」
そんな金があるのなら、少しは街の治安維持に予算を回せばいいものを・・・とカイルが肩を竦めた時である。

突然、フードを目深に被った兵士が二人の行く手を遮り、厳しい口調で詰問してきた。
グレイ・フォックスの居場所が分かるくらいなら、こちらが教えて欲しいくらいだと思うヒヨさんは、目下盗賊ギルドの首領を救いたいと思っているのに、思い切り避けられていたりする。
二人がポカンとしていると、有益な情報は得られないと踏んだのか、兵士は舌打ちをして別の通行人の元へ走って行った。

ヒヨさんとカイルは、別の通行人を捕まえて尋問を始める兵士を見つめて、更にぽかーんと口を開けた。
グレイ・フォックスに逮捕状が出たなんて、今更過ぎて、ブラックホース新聞もわざわざ取り上げたりしない。
なにしろ帝都の中で、彼の手配書が貼られていない地区はないのだから。
しかし・・・

カイルに言われて、ヒヨさんはまじまじと兵士の姿を見つめた。
身につけている鎧はくすんだ錆色の鉄鎧・・・帝国兵のそれに違いないが、被っているフードは魔術師ギルドのメイジを現す旧式の青鼠色だ。
ヒヨ「ど、どしてバトルメイジさんが、グレイさんを探すの?!
」
カイル「さぁな
」
バトルメイジと言えば、魔術師ギルドで育てられた戦士と魔術師のハイブリッドだ。
通常の魔術師とは違い、彼らはより実戦に耐えうるよう、剣の訓練も受けている。
それが何故、地回りの警備兵のような仕事をしているのだろう?
もしかして・・・盗賊ギルドに入ったことがバレちゃったとか?!
思い当たる節なら山ほどある。
あっという間に不安に駆られ、思わず事情を聞きに行こうとするヒヨさんだったが、その襟首をカイルがむんずと掴んで止めた。

カイルは、なおも聞き込み中のバトルメイジをちらちらと見遣るヒヨさんを、ガッチリと拘束した。
何せ彼女は、根っからのトラブルメーカーなのだ。
せっかくの夕食の約束を、ふいにされてはたまらない。
本当は雰囲気のいいティバーセプティムイン希望だけれど、こうなったら執事喫茶でも構わない。
カイルは問答無用で家主の襟首を引っつかみ、目的の酒場へと引き摺って行った。
そして・・・

残念ながら、本日もトラブルの巣窟へと足を踏み入れてしまったようだ。
しかも、双子猫だけでなく、店のマスターまでもが切羽詰った様子で、いきなりヒヨさんに助けを求めてきた。
一体何事か?と事情を訊ねてみると、3人は無言で、ある一点を指差した。
そこには・・・

執事喫茶の客を強制尋問している帝国エリート兵の姿があった。
ヒヨ「こんなところまで?!
」
よく見れば、エリート兵は、以前レックスの私室で見たことのある彼の部下だ。
ということは、レックスの肝いりで、派手な事情聴取大会が開かれているのだろうか?

双子猫の言葉にヒヨさんは絶句した。
ヒヨ「でも、私たち普通に入れてもらえたよ?
」
地区を隔てた門を守る衛兵は、ちらりと自分たちの顔を見ただけで、咎めることなく港地区に通してくれたと主張すると・・・

突然店の扉が開いて、スキングラッドの居候x2がやって来た。
レックスが港地区を封鎖したことを聞きつけて、飛んで来たらしい。
ルゥ「陸路はどうにもならなそうだったからねっ、湖を歩いて来たんだよ
」
別に門を壊しても良かったんだけど・・・と物騒なことを口走りつつ、ルゥさんは微笑んだ。
主に服を濡らさなくて済む程度にしか思われていない水上歩行の魔法も、こういう時にはすこぶる役に立つらしい。
ゴメス「物資の出入りも全面禁止だそうだからな。
奴ら、スラムの住人を兵糧攻めにするつもりらしい」
ヒヨ「兵糧攻め?!
」
カイル「物資の出入りも禁止って・・・ここ港だぞ?!
」
ゴメスさんから深刻な状況であることを知らされ、ヒヨさんとカイルは凍りついた。
何せここは港・・・それも首都の港だ。
交易が乏しい故か、実際は船の出入りなんて殆ど無い貧相なものだけれど、盗賊一人を捕らえる為に、一国の玄関口を完全封鎖してしまうなんて、正気の沙汰とは思えない。

いくら政治が機能していないシロディールといえど、たかだか帝都の警備隊長ごときが、ここまで好き放題出来るとなると世も末だ。
元老院でもブレードでもいいから、とっとと舵取り役を決めないと、とんでもないことになる。

スラムの住人達は、レックスの人質になったも同然だ、とマスターは唇を噛んだ。
グレイ・フォックスが貧者の味方だと言うのなら、愛する貧者が餓死する前に、自ら出頭しろというわけだ。
これには夕飯の心配をしていたカイルの頭も、憤りでいっぱいになる。

貧しいスラムの住人を兵糧攻めというだけでも十分酷いけれど、輪を賭けてレックスときたら女性の敵なのだ。
今日こそは、あのそこはかとなく漂うナルシスト顔を凹ませてやる
!とヒヨさんは鼻息も荒く、協力を申し出た。

さて、家主と相棒が、執事喫茶で鬨の声を上げている頃、同じ帝都にある魔術師ギルドでは・・・

膨大な量の古文書の解析を終えて、シィナはホッと息をついていた。
遺物マニアのブルマの伯爵夫人から依頼された仕事は、単なる貴族の道楽だ。だから、別に断っても問題はないのだけれど、資金不足の今となっては、戦士ギルドが斡旋してくれる仕事と同様、魔術師ギルドにとって欠かせない収入源になっている。

出来たてほやほやの解析レポートを手に取り、誇らしげに頷くのはギルド幹部のポラス師だ。
今まで多くの生徒を優秀な魔術師に育て上げ、送り出してきたけれど、その中でもシィナの出来は群を抜く・・・彼の兄である悪魔・・・もといルゥさんを除けば。

冗談めかして答えるポラス師だったが、学生の研究課題はおろか、教授陣でもこれほど正確な解析を出来るかどうかの代物を、こともなく容易いと言い切ってしまうシィナの才には、改めて感心せざるを得ない。
古代語とは、ギルドが魔術の祖と仰いでいる古代アイレイドの公用語のことだけれど、その範囲は実に広いのだ。
タムリエル全土を支配していた故に一つではないし、階級によって使われる特別な単語も多くあれば、時代によっても変化する。
その上、魔術関係の表現ともなればより抽象的な上、音律までもを読み解く必要があるから、感性も要求される。
ただ翻訳するだけでは、そこに隠された多くの意味を見失ってしまうのだ。
ポラス「あとは、こちらで処理しよう
」
ポラス師は解析レポートを丁重に懐にしまって、かつての弟子であり、現ギルド長様の労をねぎらった。
そして・・・

シィナが指示を出しかけた時である。

エントランスとカウンシルルームを繋ぐ魔方陣から、怒気にまみれたボシェル女史の声が轟いた。

せっかくブルマの伯爵夫人から大口の依頼が入ったというのに、何というバッドタイミング。
恐らく遺跡調査が必要になるだろうと、朝からワクワクテカテカしていたボシェル女史は、大地を揺るがさんばかりの勢いで、地団太を踏んで踏んで踏みまくった。
古文書の解析以上に、貴族へのバトルメイジ貸し出しは、結構な料金をせしめられるのに・・・
ボシェル「あの脳筋どもときたら、タダで貸し出せと言ってきたんですのよ?!
」
そして、強引に全バトルメイジを連れて行った。

魔術も扱える屈強の戦士というところにバトルメイジの価値はある。
いくら首領といえども、盗賊一人を捕まえるのに魔術の腕は関係ない。だからこそ帝国軍は、帝都を警備するレックスに、魔術師ギルドから召し上げた精鋭を与えていないのだ。
何かの間違いじゃないのか?と二人が目を丸めていると、ボシェル女史は「私だって最初は冗談かと思いましたわよ!
」と憤慨しながら、一通の書簡を掲げた。

ボシェル女史が貸し出しを渋ると、レックスは印籠よろしくバトルメイジの無条件譲渡にサインされた羊皮紙を突きつけてきたらしい。
彼の話によれば、アークメイジとは懇意の仲なんだそうで、バトルメイジの貸出しを頼んだところ、快く受け入れてくれたというのだ。
そんな話を、テカテカ頭をなでつけて、ウィンク混じりにされたのだから、ゾッとしたなんてもんじゃない、と脳筋嫌いのボシェル女史は憤った。
しかし・・・

ボシェル女史から渡された書簡にある文字を確認し、シィナはなるほど・・・と頷いた。
記されているサインは家主の筆跡ではなくシィナのそれだ。しかも精巧に偽造されている。
目下、現アークメイジに代わって、実務一切を取り仕切っているのはシィナだけれど、いくらお飾りとはいえ、書類のサインくらいは本人がしているだろうとレックスは思ったに違いない。
しかし、実際の魔術師ギルドでは、ほんの僅かであっても彼女を実務に関わらせた場合、天変地異並に恐ろしいことが起こるのではないか?と考えているボシェル女史によって、アークメイジには一通の書簡も触れさせない完璧な体制が取られているのだ。
そんな情けない事情により、ヒヨさんに与えられる仕事と言ったら、今のところ書庫の掃除程度しかないわけだが。

シィナの話を聞いた途端、二人の幹部は鼻息を荒くして帝都警備隊に殴り込みに行こうとした。
しかし・・・

ギルド長様が、落ち着き払った声で二人の幹部を止めた。
抗議ならいくらでも出来るけれど、ブレードが帝都を空けている以上、レックスの上司を辿っていけば、最後には元老院に辿り着く。
魔術師ギルドを兵糧攻めにしようとしている老人達のこと、新しい餌を与えるのは得策ではない。
それに、毎度法を度外視した作戦を断行しているにも関わらず、何の処罰も科せられることなく、未だに好き放題やっているところを見ると、レックスの上司は部下に対してかなり寛容であると言える。
今回の件だって、抗議したところで、彼が処分されるかどうかは怪しいところだ。
むしろそれならば・・・

シィナは何とも寛大な言葉を口にした。
ボシェル「冗談じゃありません!
帝都警備隊ごときにバカにされて黙っているおつもりですか?!
」
ボシェル女史は、今や怒死せんばかりの勢いだ。
が・・・

レックスは大事なことを忘れている。
彼が敵に回したのは魔術師ギルド・・・マジカのマの字も理解していない者にとっては、未知の世界だということを。

シィナは不敵な笑みを浮かべて呟くと、ポラス師とボシェル女史を呼び寄せて、何やら耳打ちをした。
つづきます