謎の遺物とスラムの危機:2nd SHOT
こんばんわ、れらです(’▽’)ノ
さて、本日のOblivion。

ブルマにある盗賊ギルドのアジト、その地下室で、グレイ・フォックスは大袈裟な泣き声をあげていた。

上階から血相を変えて降りてきたのは、快音を耳にしたゴメスさんだ。
盗賊ギルドの撲滅に帝国兵が力を入れている今日この頃、ギルド員の安全も考慮しながら、どの金持ちをどう狙うべきか・・・・幹部を集めて真剣に会議をしていたというのに、当の首領は右腕任せにしてこの有様だ。普段は優しく温和な彼が怒るのも頷ける。
しかし、ゴメスさんの顔をちらっと見たグレイ・フォックスは、構ってくれと言わんばかりに更に大げさに泣き声を上げるからたまらない。
ゴメス「うるさい!!会議が進まんだろうが!
」
目覚まし時計を止める要領で、古臭いマスクの頭頂部を叩き、ゴメスさんはグレイ・フォックスを怒鳴りつけた。
グレイ・フォックス信奉者の多くは知らないことだが、これがシロディール一の大盗賊の日常だったりするのだから、嘆かわしい。

駄々をこねている時のグレイの話は、下らなくて聞いていられないと、顔をしかめるゴメスさんだったけれど、最後の言葉はさすがに聞き捨てならない。
ゴメス「あのな、彼女はお前を助けたい一心で、無理な仕事をやってくれているんだぞ?
裏切るなんて言い方をするな
」
グレイ「だって、ほらぁ、これ見てよー
」
窘められたとたん、グレイ・フォックスはムスッとして唇を尖らせた。
そして何やら懐を探り、一枚の紙切れをゴメスさんに押し付ける。

わけもわからず受け取った羊皮紙を見てみると、子供が書いたようなぐにゃぐにゃの線が、何の脈絡もなく輪を描いたり交差したりしていた。
ゴメス「あのな、俺は今会議中なんだ。お前の下らん遊びに付き合ってる暇は・・・
」
羊皮紙を返そうとすると、今度は銀の指輪を差し出して、グレイ・フォックスは必死に言う。
グレイ「それをはめて、もう一度読んでみなさい
」
鼻息も荒く詰め寄るグレイの決意は無駄に固そうだ。
ゴメスさんは仕方なく指示通りに指輪をはめて、再度羊皮紙を覗き込んだ。
しかし、そこには当然のように、意味不明な子供の落書きがあるだけだ。

ゴメス「暗号?」
グレイ「そう!そしてその指輪は、本来暗号を解読するのに役立ってくれる有り難~い
物なんだYO!
」
だから自分に恩義を感じているギルド員に預けておいた代物なのだ、とグレイ・フォックスは胸を張った。
盗賊ギルドの幹部の中には、アーマンドのように帝国兵に顔を知られている者も少なくないから、大事な物を隠す場合、目立たないギルド員に預ける方がかえって安全だ
という天下の大盗賊の知恵である。
しかし・・・

グレイ・フォックスの知恵は、無所属の泥棒(しかもトカゲ)の手によって脆くも崩れ去り、それから三日ほどの間、彼の機嫌はすこぶる悪くなってしまい、夜毎しょーもないオヤジギャグに付き合わされた幹部の1人が寝込む羽目になった・・・と丁寧に解説までされて、グレイ・フォックスの機嫌はますます下降線を辿る。
グレイ「だーかーらー、その奪還をヒヨコちゃんにやらせてみたんだよね。
それで、戻ってきたのがその指輪
」
ゴメス「ふむ・・・」
ゴメスさんは、はめていた指輪を抜き取って、まじまじと見つめた。

この指輪を最初に手に入れた時、グレイ・フォックスに散々自慢され、見せびらかされた経験のあるゴメスさんの目には、その時とまるで同じ物のように見えた。
彫られた文字といい、くすみ具合といい、髪の太さほどの細かい傷まで、盗まれる前とそっくり同じだ。
確かにエンチャントの類はかかっていないようだけれど、元の指輪にもエンチャントはかかっていなかった。それなのに解読の力があるというところが、グレイ・フォックスの自慢の種だったはずだ。
何なら、もっと詳しい白猫でも連れてくるか?と問いながらゴメスさんが指輪を返すと、グレイ・フォックスはムッツリ顔のまま頭を振った。
グレイ「ジロ君も同じ答えを出すだろうし、ウチのバイヤーだって同じだろう。
私ですらこれが偽物には見えない
」

ぐにゃぐにゃの文字がのたくった羊皮紙をぐしゃっと握り締めて、グレイ・フォックスは再び大仰に泣き叫んだ。
こうなるともう手に負えない。
ゴメス「あのな、俺の相棒の弟も一緒だったんだ。彼は優秀な魔術師だぞ?
その彼が、特に何も言っていなかったのなら、本物ってことじゃないのか?
=3」
たかが指輪一つで考えすぎだ、と窘めるゴメスさんだったが・・・

グレイ・フォックスは不機嫌そうに唇を尖らせた。
彼とは一度、この場所で顔を合わせた事がある。
ヒヨさんの同居人で、魔術師ギルドにおける同僚だという、利発そうな黒髪のミスティックエルフだけれど・・・

まったくどこまでふざけているんだか・・・
ゴメス「とにかく俺は会議に戻るぞ。諦めて大人しくしていろ
」
これ以上アホなオッサンの冗談には付き合っていられない、とばかりにゴメスさんが踵を返すと、グレイ・フォックスは不意に何かを思ついて、立ち去ろうとする彼を呼び止めた。

確か魔術の天才なんだよね
?と声をかけられ、ゴメスさんは観念したように振り返った。
出鱈目なように見えても、グレイ・フォックスは物の価値を十分に知っている男だ。そして、これと決めた得物は絶対に逃さない。

あっちはあっちでまた面倒なんだが・・・
=3
ゴメスさんは指輪を受け取って溜息をつくと、幹部達が待つ上階へと戻って行った。


謎の快音(グレイ・フォックスによる)に邪魔されつつも、何とか盗賊ギルドの会議を終えてスキングラッドに戻って来たゴメスさんは、再び額に巨大な怒りマークを浮かべていた。
仕事にしても私生活にしても、どうしてこう自分の周りにはアホばかりが揃っているのだろう。
指輪を持ち出されたルゥさんは、只今盛大な勘違い・・・を装って、仕事から帰って来たゴメスさんを熱烈歓迎中だ。

否定すること10回目にして、ようやく相棒をからかうことに満足したのか、ルゥさんは上機嫌で指輪を受け取った。
ルゥ「で?この古臭ーい指輪が何だって?
」
ゴメス「鑑定してくれ
」
あれだけ言ったのに話を聞いていなかったのか?と眉を顰めながらゴメスさんは説明する。
ゴメス「グレイの話によれば、目には見えない解読の魔法がかけられていたらしいんだがな。
それがすっかり消えてしまっているらしい」
だから偽物じゃないかを調べて欲しいと言われると、ルゥさんは笑みを浮かべて即答した。

まだろくに見てもいないのに・・・またお得意の冗談か?と呆れるゴメスさんだったけれど、ルゥさんは頭を振って否定した。
それどころか・・・

遺物と言えば、シロディール帝国が興るより以前に作られた、貴重なエンチャントアイテムのことである。
ゴメス「だが、お前・・・今、偽物だと言ったろう?
」
ルゥ「偽物だけど遺物だよ。もっとちゃんと言うと、遺物の遺物ってことだねっ
」
どこがちゃんとしているんだか・・・毎度のことだけれど、とんちんかんな相棒の言うことはサッパリ分からない。
やはり魔術の天才とはいえ、彼に鑑定を依頼したのは間違いだったんじゃないだろか?とゴメスさんが後悔し始めると、ルゥさんは、仕方ないなぁと溜息を零して説明を始めた。
ルゥ「今では魔術師ギルドでさえ、発掘品なら何でも遺物って呼んじゃってるけど
本来遺物っていうのは、マジカで創られた物のことを言うんだよ
=3
例えばこの指輪・・・」

そう言ってルゥさんは、いつになく真剣な表情を浮かべて、相棒に問い質す。

ルゥ「ふーん・・・」
ゴメスさんの説明を聞き終えると、ルゥさんは冷ややかに微笑んで、暫く物思いに耽るように沈黙した。
そして、徐に口を開く。

それどころか、盗賊ギルドとは関係の無い場所に捨ててしまった方がいい
とルゥさんは助言した。
ゴメス「だが・・・そういうわけにも・・・
」
いくかどうか・・・と、ゴメスさんは言葉を濁した。
何せ、グレイ・フォックスときたら、いい歳をしたオッサンのくせに、我侭で駄々っ子なのだ。
それが偽物だろうが本物だろうが、たとえ危険物であろうとも、一度執着心を掻き立てられてしまうと是が非でも手放したがらない。
しかも頭の痛いことに、その執着心は最近になって悪化している、とゴメスさんは感じていた。
解読の指輪といったって、実際は暗号文を使う輩なんて、シロディールには殆ど存在しないのに、執拗にこだわっている辺り、諦めてくれるかどうか。
ゴメスさんが唸っていると・・・

それでも手放すべきだと思う理由を告げられ、さすがのゴメスさんも凍りついた。
それは以前、シィナに協力を仰がれて、ブラックウッドカンパニーの幹部を殺した指輪を鑑定した時のことだという。

エンチャントだけなら、ルゥさんも同じ魔法を扱える。けれど・・・
ルゥ「その指輪のエンチャントは、装備者の言葉に反応して発動したんだ。
つまり、指輪が装備者の言葉を『聞いて』いたってこと」
ゴメス「どういうことだ?」
ルゥ「マジカから創られた物はね、誰の手に渡ろうと創り主の一部なんだよ。
その『縁』を解かない限りはねっ」
まるでそこに目があるように、遺物を通して周りを視ることも可能だし、耳の代わりにもなる。
そして口の代わりになれば、そこから魔術を発動させることだって出来るかもしれない。

だから安全なのだとルゥさんは微笑むけれど、それでも家主がディードラ神に貰った遺物は、この館の地下で厳重に保管されているところをみると、先代のアークメイジをも凌ぐと言われた相棒でさえ、細心の注意を払って扱わなければならない代物なのだろう。

壁に耳あり障子に遺物・・・それ以前に遺物を作るためには、アイレイドよりも更に古い魔術に関する知識が必要だ。
その知識を持っているのは、自分と先代のアークメイジ以外にはいないだろうと思っていたルゥさんは、まだ見ぬ3人目の存在を、かなり警戒しているようだった。
太古の知恵が善い目的で使われればいいのだけれど、そういうわけでもないらしいことは、前回の指輪からして嫌というほど分かってしまうから。
ルゥ「とにかく、触らぬ神には祟りなしってこと。
帝都の堀にでも捨てちゃった方がいいねっ
」
そう言って、指輪をポケットに放り込んだ時である。

突然、部屋の扉が荒々しい音を立てて開いたかと思うと、一人の中年男が転がり込んできた。
ゴメスさんの部下、盗賊ギルド幹部のアーマンドだ。
かなり急いで来たのか、息も絶え絶えな様子の彼をポカーンと見つめる二人に対し、アーマンドは息を整える間も惜しんで本日のトラブルを報告した。

つづきます