貧民税導入?:1st SHOT
こんばんわ、れらです(’▽’)ノ
さて、本日のOblivion。

ギルド長様の朝は、届いたばかりのブラックホース新聞に目を通すことから始まる。
時間はまだ早朝だけれど、一日が本格的に始まる前に、世間の動向を把握しておくのは大切なことだ。
本日もあまり景気の良くなさそうな一面の記事に視線を落とすと、ハウスメイドがコーヒーの匂いを漂わせてやって来た。

メイドはとかく下らないことを気にする傾向にあるけれど、キノコの食卓を回避する為には、気遣ってやることも必要だ。
占いの結果に満足したのか、ダークエルフに注意・・・の言葉を真剣に反芻すると、ハウスメイドこと家主は、シィナにとってもう一つの朝の習慣を手渡した。

なっち語でいうところの、たてたてのコーヒーを受け取り、再び新聞に目を落とす。
朝食前からコーヒーというのはあまり褒められた習慣じゃないかもしれないが、頭を冴えさせるにはこれが一番だ。
と思って、マグに口を付けたところで・・・

思わず吹きそうになるのを堪えて、コーヒーとは程遠い謎の液体を何とか飲み下した。
ひよこ豆とは、ヨーロッパから中東まで、幅広い地域で愛されている豆のことである。
家主の話によれば、オーク女将が経営する万屋に錬金薬の納品に行ったところ、シロディールでは大変珍しい食材が手に入ったとかで、お裾分けしてもらったんだそうだ。
まぁ、キノコ茶から脱却しただけでも、褒めるべき・・・なのかもしれないが、優雅な(?)ギルド長様の朝は、こうして毎度の非常識によって躓いてしまうのだ。
おまけに何の因果か、本日はそれだけでは終わらない。

まだ日も満足に昇っていない早朝にも拘わらず、お客様がやってきた。
黒猫タロとスキングラッドの居候ゴメスさんだ。
ノックもせずに飛び込んで来たと思ったら・・・

蒼白な顔をした黒猫が、いきなり家主に縋りつき、弱々しい声で衝撃のニュースを口にした。

シィナが慌てて手元の新聞に目を落とすと、ゴメスさんが大きく頭を振った。数刻前に起こった出来事なら、今朝の朝刊には載っていないだろう。
けれど・・・

シィナは片方の眉を吊り上げて、訝しげに訊ねた。
魔術師ギルド長様と、野良猫魔術師は犬猿の仲である。
そのせいか、シィナの頭に真っ先に浮かんだのは、呆れと納得だ。
港地区の執事喫茶でマダム相手に愛想を振りまいている白猫は、シィナに言わせれば、何でも金を基準に物事を考える俗物である。
家主にやたら愛想がいいのも、中身はどうあれ彼女がアークメイジという高位にあるからで、その反面、自分にとって得にならない相手・・・特に男性陣にはすこぶる冷たい。
計算高いことを悪いとは言わないが、税金までケチっていたのなら自業自得だ。
そんな白猫が監獄送りになったとしても、シィナには全く同情心は湧いてこなかった。
むしろ、野良猫を躾けてもらういい機会だとさえ思う。
しかし、ゴメスさんの話には一つ腑に落ちない点があった。

勝利にも似た愉悦を覚えていたシィナの表情が、ゴメスさんの答えに曇る。
いくら、経済状況の悪いシロディールとはいえ、夜中に税金を集めて回るほど深刻なものだろうか?
それも・・・
シィナ「スラムの住人に支払えるものなんですか?」
そもそも防壁に守られた街に住めないくらいに貧しいから、危険と隣り合わせの土地にバラックを作っている人たちだ。
納税はもちろん市民の義務だけれど、帝国がスラムの住人を市民と認知しているかどうかはかなり怪しい。
何せ市民の安全を守る帝国兵の巡回ルートからも外されているエリアなのだから。

シィナが困惑にムッツリと眉を顰めていると、2階から降りてきた内藤先生が話に加わった。
あちらの世界からの門が開いちゃったりしている昨今、堕落した帝国兵の噂は後を絶たない。
チェイディンハルの警備隊長だって独断で罰金を課したりするし、帝都ですら巡回中に堂々と店の品を懐に入れていくようなご時世だ。
そして極めつけは・・・

盗賊ギルドに買収されて、殺人罪も金でチャラにしてしまうのだから、今時帝国兵の行動が正義だなんて信じる方がバカをみる。
いくらお金大好きな白猫でも、そこまでバカじゃないだろうから、怪しい税金を払わなかったのは正解だ、と肩を竦めてカイルは黒猫を指差した。

いつも弟の白猫とセットで行動しているタロは、まるで半身を失くしたように生気が無い。
元々、明るい性格とは言えない彼だけれど、身内が逮捕されてしまっては、ショックだろう。
シィナはいつの間にか芽生えてきた同情心に心を動かされ、徐にゴメスさんを仰ぎ見た。

いつもは金貨を見るなり、二つ返事で殺人を揉み消してくれる帝国兵が、どういうわけだか今回ばかりは動かないらしい。
そうなるとギルドの方ではどうにも出来ず、ここに来たのだとゴメスさんは申し訳なさそうに答えた。

まさか、帝都の監獄でドンパチ?!
と、ヒヨさんの顔が青ざめる。
シィナ「それも面白いかもしれないけど、保釈金を払った方が簡単だ
」
シィナはある意味、魔法より強い、もう一つの力を持っていた。
そしてそれは・・・

たとえ、どんな額であろうとも・・・

そう簡単に揺るぎはしないのだ。
不敵な笑みを浮かべるシィナの言葉を聞いて、何故に一介のギルド員である彼が、アークメイジの自分よりも金持ちなのか・・・ヒヨさんが涙目になったのは言うまでも無い。


帝都、監獄地区。
帝都内で逮捕された者は元より、帝国法により重罪を科された者や、政治犯なんかが収監される監獄は、囚人が丸ごと逃げ出すブラヴィルなんかとは違い、警備が鬼のように厳重だ。
何せ、高い防壁に囲まれた帝都の一区画が丸々使われているのだから、難攻不落の城砦と言っても過言ではない。
そんな物々しいエリアに、ヒヨさん一行は足を踏み入れていた。
謎の税金滞納で連行された白猫ジロを保釈してもらう為である。
が・・・

監獄エリアのロビーにシィナの怒声が響き渡る。
保釈金さえ支払えば身柄を引き渡してもらえるだろう、という彼の予想は大きく外れ・・・

受付係の帝国兵は、保釈金の受け取りを断固拒否していた。
別に、シィナとて相手が天敵だからといって金額をケチっているわけではない。

むしろ、一部のマニアにとっては、値が付けられないくらいの貴重品を差し出していたりする。
ブルマの伯爵夫人辺りに見せた日には、滝のような涎を垂らして、城と交換してくれ!と言い出しかねないレア物だ。
しかし、どうにも一般人には、その価値を理解していただけないらしい。

道楽ならもっと他にあるだろ?!と呆れ返るカイルと、真っ青な顔で薄っぺらいお財布を出すヒヨさんをよそに、シィナはこれでもかと言わんばかりに眉を吊り上げ、兵士に対して説教をかます。
通常なら横柄な態度を取りがちな帝国兵だけれど、受付の男は随分と小心者らしく、先刻からシィナの遺物講座を涙目になりながら聞いていた。
或いは、シィナが魔術師ギルド長だと知っていて、余計に怯えているのかもしれない・・・これ以上怒らせたら、消し炭にされかねないから。
そんな光景を見かねてか・・・

ゴメスさんが二人の間に割って入り、交渉に加わった。
しかし・・・

帝国兵は申し訳無さそうにゴメスさんを見上げて頭を振った。
貴重なアイレイドの遺物だろうが、山と詰まれた金貨だろうが、無理なものは無理なのだという。

殺人や強盗の容疑で捕まった危険人物なら別だけれど、たかだか一度だけの税金滞納・・・それも初犯だというのに、随分な待遇だ。
しかし・・・

帝国兵は、後生ですから
!とかなんとか・・・とうとう地面に膝を付き、両手を合わせ出す始末だ。
しかし、当然のことながら、拝み倒されたところで納得できるはずがない。

今度は、説教モードのシィナに加えて、ゴメスさんまでもが抗議に加わり、帝国兵は竦み上がった。
それでもよっぽど上司が怖いのか・・・帝国兵は涙を滲ませながらも果敢に首を横に振り続けた。

受付の机を挟んでの激しいやり取りは、どうにも決着が着きそうにない。
ゴメスさんを加えて、更にヒートアップの様相を呈してきた押し問答を、固唾を呑んで見守っていたヒヨさんは、何やら思いつめた表情で考えを巡らせると、突然キリリと顔を上げて、カイルの肩を叩いた。

唐突に告げられて、一体何処へ?と問い返そうとするカイルだったが、口を開けた時には、受付の扉からヒヨコが走り出ていくところだった。

あまりに慌しく出て行ったものだから、家を出る前に行っておけばいいのに・・・
と肩を竦める内藤先生だったけれど、ヒヨさんは知っていた・・・・監獄から囚人を出す方法が一つだけではないことを。
つづきます